世間はお偉いさん方の戦ばかり。
特に新鮮なこともなければ、たいていの娯楽にもお互い飽き飽きしていた。
どちらが言い出したか、知れない。
ただ単純な遊びの延長でその行為は始まった。
そこにあるのは快感だけだったからだ。
お互い無理なく気持ちよくなれる。
快感で頭を真っ白にしてしまえば、余計な事を考えなくていい。
都合が、よかったのだ。

「ん・・・っ、フランス・・・も、無理・・・」
彼の掌に、何度目か分らない絶頂を迎えた。
「早くないか、スペイン」
にやにやと笑いながら目の前の青年が声をかけてくる。
「・・・お前、しつこいんだもん」
日がまだ随分と高いうちから薄暗い部屋にこもって、二人は交り合っていた。
愛とか恋とか、そんなものではない。
ただの退屈しのぎ。
「挿れていいか?」
金色の、まだ少し少女のような面影が残る青年が問う。
「おまえ、まだやんの・・・?」
顔にいくら少女の面影があっても、中身にはいっさいそんなものは残っていなかった。
「おうよ。俺まだまだ元気だし。お前がダメならそこらへんでおねーちゃんでもナンパしてやるけどよ」
かなり疲れている自分に対し、目の前の彼はまだまだ元気だ。
受け入れる身と穿つ身の違いか。
「あと一回くらいならって、あっ・・・ん・・・もう、挿れてるやん・・・っ」
腰を進めてくる動きにはまるで遠慮がない。
「だってお前の中、気持いいから、さ」
今回は、ノーマルな体勢。
若気の至りと好奇心で色々な事を試したものだ。
けれど一向に飽きは来ない。
情欲が尽きることもない。性交とは不思議なものである。
「何で・・・っ、ん・・・」
考えても仕方がないことだが、ずっと不思議に思っている。
「何で俺らに・・・生殖器なんて、ついてんだろうな・・・っ」
突き上げられる衝撃と快感に翻弄されながら、回らない舌で呟いた。
人とそっくりの外見を与えられた異質な自分たちは、子孫を残す必要なんて無い。
それなのに生殖器は人と同じようについていて、そして快感も欲求も同じように存在する。
これは何のため?
人と交わったとて、新しい命など生み出せるはずもないのに。
「知らねーなぁ。それこそ、神のみぞ知る、ってやつだろ」
汗とともに言葉が降ってきた。
「神、のみぞ、ねぇ・・・あっ・・・」
その後は特に二人とも言葉を交わすことなく、ただこの運動がもたらす快感だけを感じた。

行為が終わって、汗と精液のべたつきが気になったので洗い流す事にする。
「なあフランス、俺風呂行くけどお前どうする?」
ベッドの上で大の字に寝転がっているフランスにタオルを投げながら言った。
「んー、俺も後で風呂行くわー。そんで街出てくる」
彼は受け取ったタオルで軽く体を吹きながら答える。
「なに、お前まだヤんの?
 ほんと下半身だらしないなぁー見境ない獣みたいやん」

「まぁ、いんじゃねーの、俺ら「人」じゃないし」

それもそやな、と何故か変に納得してそのまま体を洗いに出た。
そして夜の街へ繰り出したフランスのいないベッドの上に寝転がって、最中に考えていたことを再度思い返す。
「なんで・・・」
こんな欲望が、あるのだろう。
男だから?だから、勃つのか?
じゃぁもし自分が女だったら、どういう風に感じるんだろう。
思考の泥沼にはまった気がして、軽い頭痛を感じたのでその日はもう寝ることにした。









まだ二人が本物の愛しむ心を知る前のお話。






2008/01/11