男洪が洪の弟という捏造設定になっております。
蛇足ですが男洪の性格設定(仮)
ドSで超シスコン。オマエのものはオレのもの。
「あんたさ、姉ちゃんのどこが好きなんだよ」
唐突に浴びせかけられた質問の意味を解するまでに少し時間がかかった。
姉ちゃん、と口にする相手と非常によく似た容貌を持つ相手が返事は未だかと明らかに不機嫌そうにこちらを睨む。
「どこって・・・」
身内を前に、非常に言葉にし難い問題だ。
「胸?」
「ばっ・・・!」
そんなわけないだろうと必死になって弁明しようとすると、姉ちゃん結構でかいのに、と言う言葉が聞こえてきて赤くなるほか無かった。
「じゃ、顔?」
火照った顔に、やはり彼女に非常によく似ている顔が近づいてくる。
鬘をかぶせるか髪を伸ばすかすれば見分ける事は至極困難だろう。
正直に言うと、彼女の顔はかなり好みだ。
あの大きめの胸にだって文句など無い。
しかしそれ以外に気に入っている点など思い当たらない。
そう、性格が論外だ。
自分を見ると敵意しか向けてこない相手に、どうして恋心など抱く事ができよう。
実際はそうやって何度も思い込んでいるだけで、どうしようもないくらい焦がれている自分を直視したく無いだけだけれど。
「あんたも残念だよねー。姉ちゃんオーストリアさんの事しか頭に無いもんな」
傍目から見ても明らかな現実を改めて突きつけられ、頭に血が上って思わず言ってしまった。
「あんな女別に好きじゃねーよ!」
突如唇に、柔らかい感触を持つものが触れて、固まる。
眼は開いているのに何も見えない。否、見えていない。
何が起こったのかが本気でわからない。
そんな自分を尻目に、ようやくはっきりしとしてきた視界には嫌味な笑顔を湛えた彼の表情が広がっていた。
「奪っちゃったー」
もしかして初めて?なんて声が聞こえた気がする。
何が起こったのか分からず呆然とするしか無かった脳が、次に発せられた彼の言葉で一気に覚めた。
「俺のモノになってよ」
語尾にハートマークがつきそうな声音で、そんな物騒な事を言われた。
とりあえずは一発殴ってやろうと手を出しかけて、気付く。
いつの間にか自分の両手は紐のような物で縛られていた。
容易に解く事は出来ない。
どうにかして両手を自由にしようと足掻く自分を見ながら、目の前のいけ好かない男は尚も耳が凍りつきそうな言葉を口にした。
「逃がすわけ無いじゃん。せっかく手に入れたのに」
俺の前で姉ちゃんばっか見てるから悪いんだよ、と囁かれたと思うと突如目の前が暗くなった。
布のようなもので視界を奪われたらしい。
背筋に悪寒が走った。
まるでこれから何が起こるかを感じ取ったように。
両手を拘束され、視界さえ奪われ、唯一自由な足で蹴り上げてやりたくとも彼がどこにいるか分からない。
「姉ちゃんの事好きじゃないって言ったの、自分だよ?」
くすくすと笑う声が聞こえる。
「なら俺が貰っちゃっても、いいよね」
あんたは姉ちゃんそっくりの俺の顔好きだろうし、俺もあんたの事結構気にいってんだ、という言葉に吐き気がした。
「ふざけんな、俺はホモなんかじゃねえよ!」
目隠しをされ両手を縛られた状態で粋がる姿はさぞかし滑稽だろうが、そんな事に構っている余裕は無いと本能が告げる。
逃げなければ。
けれどどうやって。
そんな事を考えていると今まで座っていたソファーから蹴り落とされた。
「あんたに選択肢なんて、残してあげるわけないでしょ」
髪をつかまれ頭を持ち上げられた状態で、吐き捨てられた言葉。
優しく出来ないかもだけど、ごめんね。なんて、わざとらしい言葉が悪夢の始まりの合図だった事にくらい、いくら鈍いと言われる自分でも分かった。
堕落論