何でもないことの様に、彼の方は私の髪を一掬い持ち上げました。
その時の手付きが、とてもとても優しくて。
私は五月蝿い心の蔵の音が彼の方に聴こえやしないかと、そればかりが気になっていました。
彼の方の白くて長い指が、私の髪を撫でるたびに、心音は五月蝿さを増して、顔は火照ってしまい、きっと彼の方の国では何でも無いことなのでしょうけれど、人との触れ合いに不慣れな私にはどぎまぎしてしまいました。
思ったとおり綺麗な髪だ、なんて彼の方は呟かれましたが、私は其れ所ではありませんでした。
ただひたすら、必死に、いつもよりも数倍早くなった鼓動が彼の方に聴こえませぬように、と祈るしかありませんでした。
彼の方のその綺麗な指が私の髪から離れて、少し経って目線を上げると、彼の方は薄く微笑んでいらっしゃいました。
その微笑も、それはそれは惚れ惚れするものでしたが、何より私の目を引き付けてやまないのはそのきらきらと陽光を受けて輝く金糸のような髪でした。
私のように、真っ黒で重たそうな色ではなく、日に透けて輝くそれはこの世の物では無いようでした。
肌の色も抜けるような真っ白で、指先は少し桃色に染まっていました。
その宝飾の様な指先が、先ほどまで私の髪に触れられていたと思うと、折角収まりかけた頬の紅潮がまた戻ってきてしまったようでした。
ふ れ る