「ん…っ、ふっ…」

背を叩いても、その口付けは止まない。

もうどのくらい経っただろう。

いつもの優しさなど微塵も感じられないその腕に拘束されてから。

息継ぎもままならず、苦しい。

背を叩く力を少し強めると、やっと唇だけを離してくれた。

「イギ…リス…さん、離し」

「嫌だ」

普段の彼ではありえないような速答と断固とした拒否。

顔を上げて彼を見ると、見たこともない表情をしていた。

「離したらお前は行ってしまうだろう」

「……」

「…っ、どうして俺では駄目なんだ!」

声が荒げられ、同時に拘束も強さを増した。

行かないでくれ、と小さく呟く声が聞こえて胸が裂けそうだった。


どうしようも、ないのだ。


彼のあんなにも痛そうな顔を、私は知らない。



Kiss




――――――
日英同盟破棄直前。
実際は会議で決定なんですけれどね。
英は離れたくないけれど、
国民は破棄を望んでいるから、どうしようもない、という感じで・・・。