「ねぇ、プー」
「・・・・・・・・・俺はそんな名前じゃねぇ」
「じゃぁ、プーさん」
「その名前は色んな意味でヤバいだろ!アメリカの奴に聞かれたら面倒臭い事になっちまう」
「えっと、プータロー?」
「何で疑問形なんだよ!だいいち俺は無就労者じゃねー!」
「うーん、ギルバート!」
「ギルベルト!赤毛のアンのあれは別人だ」
「そうなの?そっくりじゃん、惨めなところとか。あ、でも報われちゃったらプーじゃないもんね」
「人の事好き勝手言いやがって・・・そういうお前は何なんだよ!」
「え、何が?」
「名前だよ、名前。呼んでる奴ら、皆が皆違った呼び方してて紛らわしいんだよ」
「そんなに紛らわしい?だって、オーストリアさんはミシュコルツで、イタちゃんはヴァイク、フランスのヤローがミシュ、スペインもヴァイクかな。そんなもんじゃん、皆。ミシュコルツかそれの愛称か、ヴァイク」
「・・・・・・」
「・・・何かご不満?」
「お前、本当の名前教えてないだろう」
「・・・へ?」
「正式にはミシュコルツ=ハンガリー。人間風の名前は、ヴァイク・ヘーデルヴァーリ。何か間違いがあるか?」
「俺のとこでは名字が先だけどね。合ってるよ。でもそれがどうかした?」
「ハンガリー・・・お前の姉ちゃんはお前の事を「イシュ」と呼んでる。このイシュはどこから来たんだ?」
「ミシュ、と聞き間違えたんじゃない?」
「確かに似ているが、何度も聞けば聞き分けることくらいできる」
「え、何、何回も聞いてるの!?うわーお前姉ちゃんと何話してるわけ?」
「お前がよくうちに居座ってっからアイツが来て「うちのイシュ見なかった?」とか聞いてくるんだよ!」
「なーんだ。愛されちゃってるねー俺」
「はぐらかす気か?」
「・・・・・・プーは変なところで敏いんだから・・・」
「悪かったな。じゃぁもう一つ中ててやるよ。「ヴァイク」は本名の愛称だろう」
「・・・・・・」
「大方お前の所の聖人の名前の愛称じゃねーのか?」
「・・・・・・・・・驚いた、馬鹿じゃなかったんだ」
「何でお前はどこまでも俺に失礼なんだよ」
「聖人・・・そっかそう言う事になっちゃうのか・・・うわー」
「スルーかよ」
「いやいや、あまりにプータロー君が鋭いから驚いただけだよ」
「てめぇ・・・」
「・・・・・・ねぇプロイセン」
「なんだ急に・・・」
「奇麗な右目を、ありがとう。俺は君が大好きだよ。とても大切だよ」
「・・・・・・」
「だから教えてあげる、俺の名前。本当の名前」
「・・・・・・」
「イシュトヴァーン」
「イシュトヴァーン・・・」
「俺に名前をくれた人の、聖名。誰にも汚されたくないもの。だから皆には他言無用だよ」
「そんなに大事な奴なのか」
「ヴァイクだけは比べるなんてできないよ。俺と姉ちゃんのお父さんみたいな存在だから」
「・・・そっか」
「あれ、もしかして妬いた?」
「ばっ、誰が!」
「照れない照れない、ね、ギルベルト」
「ギル・・・別に俺はそっちの名前に思い入れとか無いぞ?」
「だって皆プロイセンって呼んでるじゃん。俺だけ違う名前で呼びたいというささやかな我侭くらい見逃してよ」
「お前・・・」
「顔真っ赤!どんどん呼んであげるからね、ギルベルト」
「あーもうプーでも何でも良いから元に戻してくれ!」
2008/01/12